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QC7つ道具について(解決・定着編)【2/3】

システムテスト 2026年6月18日
#システムテスト#テスト手法#テスト観点
QC7つ道具について(解決・定着編)

はじめに

 前回までで、QC7つ道具と新QC7つ道具が問題の原因を特定し、分析するのにどのように役立つかという点について解説してきました。
今回はQCストーリーの後半部分である、問題への対策をどのように計画し、定着させていくかを紹介していきます。今回、注目するのは以下の赤線で示されたステップです。

QCストーリーのステップ

  1. 問題の明確化
  2. 現状把握
  3. 目標設定
  4. 要因解析
  5. 対策立案・実施
  6. 効果確認
  7. 標準化・定着

それでは、問題への対策をどのように計画していくかという部分から始めましょう!

QCストーリーのステップごとに道具を解説〜問題対策の計画と定着まで〜

 問題の原因が特定・分析できたなら、それに対する対処方法を立てることができます。
ここで覚えておきたいのは、対策をやりっぱなしにしないということです。対策は定着してこそ真の効果を発揮します。
以下は、具体的なアクションプランの立て方や、効果測定の方法を知りたい方に役立つ内容になっています。

5. 対策立案・実施

活躍する道具:系統図/マトリックス図/PDPC法/アロー・ダイアグラム

このステップで何をするのか

要因解析で「真の原因」を突き止めたら、次はいよいよ「どう解決するか」を具体化し、実行に移すフェーズです。
アイデアレベルの対策を、明日から誰が何をすべきか迷わないレベルの「行動計画」にまで落とし込むために、新QC7つ道具の設計・計画力が役立ちます。
これらを活用することで、「会議で良い案は出たが、結局誰も動かず立ち消えになった」という”改善活動あるある”を防ぐことができます。

系統図:方針を具体的な行動に分解

漠然とした改善目標を、段階的に「目的」から「手段」へと展開し、具体的なアクションプラン(ToDo)まで落とし込みます。最終的に、「誰がいつ実行できるか」というレベルのタスクになるまで掘り下げるのがポイントです。

系統図:方針を具体的な行動に分解

マトリックス図:対策の効果範囲を整理

 2つの要素を行と列に配置し、その交点に記号(◎、○、△など)を入れて、関係の有無や強さを一目で分かるようにします。
 対策案がたくさん出たとき、すべての対策を全力で行うリソースはありません。
「対策案 ×
効果・コスト」のマトリックスを作れば、「コストは低いのに効果が高い(=コスパが良い)」対策がどれか一目瞭然になり、優先順位を論理的に決定できます。
また、「タスク ×
担当者」のマトリックスにすれば、誰がメイン担当で、誰がサポートなのかという役割分担(RACIチャートのようなもの)を明確にできます。

対策案 効果の大きさ 即効性 コストの低さ 実現のしやすさ 合計点 優先順位
自動テストの導入(E2E) 6 4
オフショア開発の活用 8 3
ペアテストの実施 9 2
チェックリストの刷新 11 1
単体テストの強化 8 3

この表では、◎=3点、〇=2点、△=1点としている

PDPC法:想定される問題と対応策を検討

 PDPC法(Process Decision Program
Chart)は、計画通りに進まない事態(トラブル)を事前に予測し、その時の対応策(プランB)をあらかじめフローチャートに組み込んでおく手法です。日本語では、プロセス決定計画図と言います。
 
大規模なリリース作業やデータ移行など、「失敗が許されない」場面で絶大な効果を発揮します。
「もし本番環境で予期せぬエラーが出たら?」「もし予定時刻を過ぎても完了しなかったら?」という最悪の事態をシミュレーションし、そこからの復旧手順や切り戻し(ロールバック)判断基準を事前に地図のように描いておくことで、当日のパニックを防ぐことができます。

PDPC法

アロー・ダイアグラム:作業計画を明確化

 アローダイアグラムでは、作業の順序関係と所要時間を矢印で結び、プロジェクト全体のスケジュールをネットワーク図にします。アローダイアグラムはPERT図とも呼ばれます。
 ガントチャートでは見えにくい「タスク同士の依存関係」を明確にします。
例えば、「A機能のテストが終わらないと、B機能のテストは始められない」といった前後関係をつなぐことで、「どの作業が遅れると、リリース日全体が遅れるのか(クリティカルパス)」を特定できます。
これにより、管理者はどのタスクを重点的に管理すべきかが明確になります。
次の図は結合テストを例にしたアローダイアグラムです。

アロー・ダイアグラム

■ 作業者の視点

系統図

  • 改善方針が具体的な作業内容に落とし込まれる
  • 自分が「何を」「どこまで」やればよいか分かる

マトリックス図

  • 自分の作業が、どの工程や成果に影響するか理解できる
  • 作業の目的や意味を納得して進められる

PDPC法

  • 作業中に起こりそうな問題を事前に知ることができる
  • トラブル時に慌てず対応できる

アロー・ダイアグラム

  • 作業の順番や待ち時間が明確になる
  • 手戻りや無駄な作業を減らせる

■ 管理者の視点

系統図

  • 改善方針が現場レベルの行動まで落ちているか確認できる
  • 指示の曖昧さや抜け漏れを防げる

マトリックス図

  • 対策と効果の関係を整理できる
  • 優先すべき対策を判断しやすくなる

PDPC法

  • 想定リスクを事前に共有できる
  • 問題対応を属人化させずに済む

アロー・ダイアグラム

  • 作業計画と進捗を可視化できる
  • 遅延リスクを早めに把握できる

6. 効果確認

活躍する道具:グラフ/ヒストグラム/散布図/マトリックスデータ解析法(新QC7つ道具)

このステップで何をするのか

効果確認のステップでは、立案・実施した対策が本当に狙いどおりの効果を生んだのかを、客観的に評価します。ここで重要なのは、「改善したはず」「現場の感触は良い」といった主観的な判断に留まらず、事実とデータで確認することです。
また、単に数値が改善したかどうかだけでなく、

  • どの対策が
  • どの指標に
  • どの程度影響を与えたのか

を整理して把握することが、次の標準化・定着につながります。

グラフ・ヒストグラムによる変化の可視化

 まず基本となるのが、改善前後のデータを同じ条件で比較することです。グラフを用いることで、不具合件数や再発率がどう変化したか、工程ごとの負荷や作業時間がどう推移したか、といった時系列の変化を直感的に確認できます。
 一方、ヒストグラムは、不具合のばらつきが小さくなったか、特定のケースに偏りが残っていないか、といった分布の変化を捉えるのに有効です。単に平均値が改善しただけでなく、「安定してきたかどうか」を確認できる点が重要です。

散布図による関係性の再確認

 要因解析の段階で使用した散布図は、効果確認の場面でも役立ちます。対策実施後にあらためて散布図を作成することで、

  • 以前は見られた相関が弱まっているか
  • 問題とされていた要因の影響が小さくなっているか

を確認できます。
 これにより、対策が「結果として効いた」のか、それとも「一時的に数値が動いただけ」なのかを見極めることができます。

マトリックスデータ解析法で対策と効果を整理する

 効果確認の段階で特に有効なのが、マトリックスデータ解析法です。この手法は、複数の対策と複数の評価指標が存在する場合に、それぞれの関係性を整理し、全体像を把握するために用いられます。
 たとえば、行に「実施した対策」、列に「不具合件数」「レビュー指摘数」「手戻り工数」などの指標を配置し、各セルに数値や評価結果を整理します。
 これにより、

  • どの対策が、どの指標に強く効いているのか
  • 期待した効果が出ていない対策はどれか
  • 一部の指標にしか影響していない対策はないか

 といった点を、一覧性をもって確認できます。
例えば、以下のようにテスト改善のための施策を複数行い、以下のような指標を得られたとします。これらは単位がバラバラで一見すると、その効果をあわせて比較することは難しいように思えますが、このようなとき、マトリックスデータ解析法が役立ちます。

施策名 欠陥除去率向上(%) テスト工数削減(%) リリース後不具合減少(%) 手戻り削減効果(1-10点)
A. コードレビュー強化 20 -10 15 8
B. 単体テスト自動化 10 30 5 4
C. 結合テスト自動化 5 50 5 3
D. 仕様書インスペクション 30 -5 25 9
E. 探索的テスト導入 25 10 20 6

※テスト工数削減のマイナスはテスト工数が増えたことを表します

マトリックスデータ解析法による施策のポジショニング分析

マトリックスデータ解析法を使うと、多くの指標を「2つの軸」に要約して、施策の特徴を一目で把握できます。

■ 横軸(Axis 1):品質向上への寄与度

  • 左に行くほど、不具合除去や手戻り削減への効果が高いことを示します (D.
    仕様書インスペクション、A. コードレビュー強化など)。

■ 縦軸(Axis 2):効率化(時短)への寄与度

  • 下に行くほど、工数削減やスピードアップへの効果が高いことを示します (C.
    結合テスト自動化など)。

この図から、 「自動化(B,C)は効率化には効くが、品質向上(欠陥除去)への直接的な寄与はレビュー系に劣る」
「インスペクション(D)は効率は下がるが、品質向上効果は最強である」
といった特徴が客観的に分かります。これにより、「次は品質を上げたいからDをやろう」といった意思決定が可能になります。

■ 作業者の視点

  • 自分たちの取り組みが、どの点に効いたのかが分かる
  • 効果の薄い作業を見直す材料になる

■管理者の視点

  • 対策の投資対効果を整理して把握できる
  • 次に重点化すべき施策を判断しやすくなる

マトリックスデータ解析法を用いることで、効果確認が単なる「結果報告」ではなく、次の改善につながる分析の場になります。

効果確認でありがちな失敗と注意点

 効果確認のステップでは

  • 改善前と異なる指標で比較してしまう
  • 短期間の結果だけで判断してしまう
  • 良い結果だけを取り上げてしまう

といった失敗が起こりがちです。
QC7つ道具・新QC7つ道具を用いて整理することで、こうした偏りを防ぎ、誰が見ても納得できる評価につなげることができます。

7. 標準化・定着

活躍する道具:管理図

このステップで何をするのか

効果確認によって対策の有効性が確認できたら、そのやり方を一時的な改善で終わらせず、安定して続けられる形にすることが重要です。このステップでは、改善後の状態を「標準」として定着させ、再び問題が起きていないかを継続的に監視します。ここで活躍するのが管理図です。管理図は、工程や作業の状態を時系列で可視化し、異常と通常のばらつきを区別するための道具です。

管理図とは何か

管理図は、単なる折れ線グラフではありません。あらかじめ設定した管理限界線(上限・下限)をもとに、データが「安定した範囲内に収まっているか」「異常な変化が起きていないか」を判断します。
これにより、

  • 問題が再発しそうな兆候を早めに察知する
  • 数値の変動に過剰反応しない

といった、冷静な品質管理が可能になります。

ソフトウェアテストにおける管理図の具体例

たとえば、以下のような指標が管理図の対象になります。

  • テスト工程ごとの不具合検出件数(週次)
  • レビュー1件あたりの指摘数
  • テスト実行にかかる平均工数
  • リリースごとの重大不具合発生率

次の管理図は「レビュー1件あたりの指摘数」を用いた管理図の例です。

「レビュー1件あたりの指摘数」を用いた管理図

 この管理図を読み解くと、多くの期間は赤線の中で不規則に動いており、「工程は安定している(対策が定着している)」と判断できます。
 しかし、第8週に上限(UCL)を超えた点があります。これは「何か異常が起きた(レビュー対象の品質が極端に悪い、あるいはレビュー基準が厳しすぎるなど)」というサインであり、すぐに原因調査が必要であることを示しています。

■ 作業者の視点

  • 自分たちの作業が「いつも通りにできているか」を確認できる
  • 数値で示されるため、感覚や経験だけに頼らずに済む
  • 異常が出たときに「気づいた人が声を上げやすくなる」

■ 管理者の視点

  • 改善が一過性で終わっていないかを確認できる
  • 現場の状態を定点観測し、異常の兆しを早期に把握できる
  • 数値をもとに、是正対応や再改善の判断ができる

おわりに

 ソフトウェアの品質問題は複雑怪奇に見えますが、QCストーリーという道筋と、QC7つ道具・新QC7つ道具という武器があれば、必ず解決の糸口は見つかります。本記事では、問題の明確化から対策の定着まで、どのフェーズでどの道具を使えばよいかを具体的に解説してきました。
 重要なのは、これらの道具が「問題を可視化する(QC7つ道具)」力と、「思考を構造化する(新QC7つ道具)」力の両方を備えていることです。これにより、「不具合を減らす」という結果だけでなく、「なぜ起きたのか」「どう防ぐのか」というプロセス自体を論理的にデザインできるようになります。
 使い方は実践の中でこそ身につきます。まずは手元のデータをグラフにしたり、アイデアを親和図でまとめたりすることから始めてみてください。その一本の線、一つの図が、**迷いなく正しい判断を下すための「心強い味方」**となり、あなたのテスト活動を一段上のレベルへと引き上げてくれるはずです。

付録 迷ったときの「QC7つ道具」選び方チャート

「今の自分の状況」に当てはまるものを選んでみてください。それが、今のあなたを助けてくれる「最強の味方」です。

1. 「何が問題か」モヤモヤしているとき(入口)

心の声(困っていること) おすすめの道具 期待できる効果
「不満や意見はたくさんあるけど、まとまらない…」 親和図法 バラバラな意見がグループ化され、 問題の全体像が見えてくる
「事実や数値を集めたいが、記録が面倒…」 チェックシート 誰でも簡単に記録でき、後で集計・分析しやすいデータが集まる

2. 「事実」をはっきりさせたいとき(現状把握・目標設定)

心の声(困っていること) おすすめの道具 期待できる効果
「結局、不具合は増えているの?減っているの?」 グラフ 推移や変化が一目で分かり、チームで共通認識を持てる 3
「データのばらつきや、偏りを見たい」 ヒストグラム 平均値だけでは見えない、データの分布(異常な偏りなど)が見える
「あれもこれも問題だ…。どこから手を付けるべき?」 パレート図 「重要な少数」の問題が分かり、優先して取り組むべき対象が決まる

3. 「原因」を突き止めたいとき(要因解析)

心の声(困っていること) おすすめの道具 期待できる効果
「思いつきではなく、漏れなく原因を洗い出したい」 特性要因図 「人・プロセス・環境」などの視点で、原因を構造的に整理できる
「この2つの事柄に、関係があるか確かめたい」 散布図 「コードが複雑だとバグが多い」などの相関関係を視覚的に証明できる
「原因が複雑に絡み合って、根本が見えない…」 連関図法 「原因と結果」を矢印でつなぐことで、悪循環の根本原因を発見できる

4. 「対策」を計画・実行するとき(対策立案)

心の声(困っていること) おすすめの道具 期待できる効果
「目標はあるが、具体的なToDoまで落ちていない」 系統図法 目的を手段へ分解し、「誰がいつやるか」という行動計画まで落とせる
「対策案が多すぎる。どれが一番コスパが良い?」 マトリックス図法 「効果×コスト」などで比較し、優先順位や役割分担を決定できる
「絶対に失敗できない。もしものトラブルが怖い」 PDPC法 事前にリスクを予測し、プランB(代替案)を準備してパニックを防げる
「タスクの依存関係が複雑で、遅れが怖い」 アローダイアグラム 作業の順序と「クリティカルパス(遅延できない作業)」が明確になる

5. 「結果」を確かめ、維持したいとき(効果確認・定着)

心の声(困っていること) おすすめの道具 期待できる効果
「複数の対策をやったが、どれが効いたか比較したい」 マトリックスデータ解析法 複数の指標を整理し、対策ごとの特徴(品質寄り・効率寄りなど)を分析できる
「改善した状態をキープしたい。異常をすぐ検知したい」 管理図 データの推移に境界線を引き、プロセスが安定しているかを常時監視できる

この記事を書いた人

GENZ マーケティンググループ MB
GENZ マーケティンググループ MB
ソフトウェアテスト・品質保証の専門集団「GENZ」のマーケティングチームのTMです。 企業文化や最新トピック、システムテストのノウハウ、品質改善の事例など、開発・テスト現場に役立つ情報を発信中。 「品質×マーケティング」で、読者とGENZの架け橋となるコンテンツをお届けします。

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