パフォーマンステストで用いられる指標、スループットについて解説
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一定時間でどれだけ処理できたかって意味だから!
今日はスループットについて解説するね
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スループットとは
スループット(throughput)とは、単位時間あたりに処理されるトランザクションやリクエスト数を指す性能指標です。
「一定時間あたりの処理能力」ともいえます。
例えば「200リクエスト/秒」や「500トランザクション/分」などの「単位時間あたり」の形で表現され、システムの処理能力を定量的に示す指標として活用されます。
スループットの数値が高ければ高いほど、同じ時間内に多くのリクエストを処理できます。
そのため、スループットはユーザー体験や業務の効率に大きく影響するといえるでしょう。

パフォーマンステストとは
パフォーマンステスト(性能テスト)は、システムにさまざまな負荷がかけられた時に、どの程度の処理能力や応答性を持っているかを確認するテスト手法です。
性能テストでは、システムが期待通りのパフォーマンスを実現できているかを検証します。
具体的には、処理速度や負荷への耐性、応答の速さなどをチェックします。
代表的な性能テストには、以下のような種類があります。
- 負荷テスト:想定される実際のアクセスに耐えられるか検証するテスト。
- ストレステスト:限界、または限界を超えたアクセスを処理する能力を検証するテスト。
- スパイクテスト:突発的な負荷に対しての耐性を検証するテスト。
負荷テストについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【負荷テストとは?必要性や手順も解説】ー負荷テストでよくあるお悩みー
なぜスループットがパフォーマンステストで重要なのか
パフォーマンステスト(性能テスト)では、スループットはシステムの処理能力を評価する上で欠かせない指標です。
一定時間内に処理できるリクエストやトランザクションの数を示すため、どれだけ効率よく処理できるかを数値で把握できます。
ここでは、スループットがなぜ重要なのか解説します。
- ボトルネックの可視化
スループットにより、ボトルネックが可視化されやすくなります。
スループットが低いということは、どこかで処理が詰まっていることを意味しています。
スループットを他の指標(レスポンスタイム、CPU使用率、メモリ使用率など)と併用することで、ボトルネックの原因を特定しやすくなるでしょう。
- 同時処理能力の把握
応答時間が良好でも、スループットが低ければ、複数ユーザーの同時利用に耐えられない可能性があります。
特に、Webサービスや業務システムなどでは、ユーザー数の増加や業務負荷の変動に耐えられる処理能力が求められます。
スループットを評価することにより、同時処理能力を早期に把握、改善することが可能です。
- システム設計や拡張判断の指針
スループットを正確に把握することで、適切なインフラ構成を計画することが可能になります。
また、不要なリソース増強を避けると同時に、見落としによるパフォーマンス不足も防げます。
このように、パフォーマンステストにおけるスループットの評価は、単なる応答速度のチェックだけでは見逃されがちな処理能力の限界や、将来的な課題を洗い出すために必要不可欠です。
負荷に強いシステムを構築、運用するうえで、スループットは欠かすことのできない指標といえるでしょう。
スループットの測定方法と注意すべき影響要因
スループットは、主に負荷テストツールで仮想ユーザーを用いて測定します。
パフォーマンステスト(性能テスト)において、以下のような方法で測定されます。
- テストツールの使用
JMeter、LoadRunnerなどのパフォーマンステストツールを用いて、仮想ユーザーを発生させ、リクエスト数を計測します。
さらにCloudWatch や New Relic APMを併用して使用することで、サーバー側のリソース使用状況や処理量などをリアルタイムで可視化でき、より精度の高いスループット評価が可能になります。
- 実稼働に近いテストシナリオの再現
業務に近い操作パターンをテストシナリオとして設計し、どの程度のリクエストを処理できるかを確認します。
- 時間帯・負荷レベル別の計測
負荷の強度や時間帯によってスループットが変化することもあるため、複数の条件でのテストを実施します。
スループットは、他の指標と組み合わせて評価することで、より正確な性能分析が期待できます。
特に、応答時間の指標であるレイテンシとのバランスを取ることが重要です。
レイテンシとスループットの関係
レイテンシ(latency)とは、リクエストを送信してからレスポンスが返るまでの遅延時間を表す指標です。
たとえスループットが高くても、レイテンシが大きい(=レスポンスが遅い)場合、ユーザー体験は大きく損なわれます。
スループットとレイテンシは相関する場合もありますが、必ずしも両方が同時に良好とは限りません。
そのため、両方の数値を把握しながら最適になるよう調整することが求められます。

注意すべき影響要因
スループットの数値は、以下のような要因によって大きく変動するため、測定時には注意が必要です。
- ネットワーク帯域:通信速度や遅延が影響し、スループットが低下することがあります。
- サーバー性能:CPUやメモリの使用率が高くなることで、処理が遅延すると、スループットも低下しやすくなります。
- データベース(DB)負荷:DBへのアクセス負荷により、応答時間の悪化を引き起こしやすくなります。
- シナリオ設計:仮想ユーザー数やランプアップ時間の設計次第でも、大きく結果が変わることがあります。
こうした要因を正しく把握した上で、正確な測定を実施することが、実用的な性能評価につながります。
スループットを重視すべきタイミング
スループットは常に意識すべき性能指標ですが、特に以下のような場面で、重点的に確認する必要があります。
- システムリリース前の最終確認
リリース前の性能テストでは、スループットが想定どおり出ているかを確認することで、本番環境でのトラフィックに耐えられるか判断しやすくなります。
- アクセス集中が予想されるイベント時
キャンペーンやセール、登録受付など、一時的にアクセスが急増するタイミングでは、スループットの低下が、そのままユーザー離脱や機会損失につながるリスクがあります。
- システム拡張やリプレース後の確認
サーバーのスペック拡張やアーキテクチャの変更後には、新構成が性能向上につながっているか、スループットの変化を確認することが重要です。
- システム改修後の確認
機能追加や仕様変更などのシステム改修を実施した場合、性能に影響があるか確認する必要があります。特に大規模なシステム改修時には注意が必要です。
スループット改善のアプローチ
スループットが低く目標値に届かない場合は、改善が必要です。
以下に、代表的な改善策を紹介します。
- ボトルネックの特定と除去
何が問題なのか、ボトルネックを特定します。
アプリケーション層、データベース、ネットワークなど、どの部分が処理能力を制限しているかを調査します。
- 並列処理や非同期処理の導入
リクエストを1件ずつ処理するのではなく、同時に複数の処理を走らせることで、処理の待ち時間を短縮し、全体のスループット向上を図ります。
並列処理は同時実行による効率化、非同期処理は待機時間の有効活用が期待できます。
- データベース(DB)およびインフラ構成の最適化
クエリの見直しやインデックスの追加、キャッシュの導入といったDBチューニングに加え、サーバーの性能強化(スケールアップ)や、台数の追加(スケールアウト)によって、処理能力そのものの底上げを目指します。
- テストシナリオの再確認と再測定
テスト条件が現実的なのか再度確認し、必要であれば再測定します。
想定より過大または、過小なテスト設計では、正しいスループットを評価ができず、誤った判断につながる可能性があります。
このような改善アプローチを実施することで、スループットを高め、ユーザー体験の向上や業務の安定稼働につなげることが可能です。

まとめ
パフォーマンステスト(性能テスト)において、スループットはシステムの処理能力を客観的に示す重要な指標です。
特に高負荷の環境下でも安定して動作するかを評価するには、スループットの測定と改善が重要です。
レイテンシなどの他の指標と組み合わせて評価することで、ボトルネックの特定や改善の優先度が明確になり、ユーザー体験や業務効率の向上につながります。
また、スループットを正しく測定・改善するには、精度の高い負荷テストの設計と実施が不可欠です。
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