1.アジャイル開発とは?
アジャイル開発とは、システム開発において近年主流になってきている開発手法です。
「アジャイル」とは日本語で「素早い」という意味です。
スプリントと呼ばれる「計画→設計→開発→テスト」の一連のプロセスを、素早く繰り返す開発手法のことをアジャイル開発といいます。
スプリントを素早く繰り返すことで、最低限の機能に絞ってより早く初期リリースをしたり、途中で仕様変更が起きたときにも柔軟に対応できるという特徴があります。
アジャイル開発は、よくウォーターフォール開発と対比されるため、次章では、アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いについて紹介します。
2.アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
アジャイル開発は、よくウォーターフォール開発と対比されます。二つの開発手法の違いは下記の表のようになっています。
アジャイル開発 | ウォーターフォール開発 | |
プロセス | 「計画→設計→開発→テスト」のスプリントを素早く何回も繰り返す | 「要件定義→設計→開発→テスト」のプロセスを順番に実施し、基本的に後戻りしない |
スピード | スプリント単位で機能を開発するため、素早く初期リリースが可能 | 各フェーズが完了するまで次のフェーズに進めないため、リリースに比較的時間がかかる |
仕様変更 | 毎週計画を立てて開発を進めるため、仕様変更に柔軟に対応できる | 要件定義の段階で詳細に仕様を確定するため、開発途中での仕様変更に対応しづらい |
品質保証 | スプリントごとに小さいテストを実施し、その評価を次のスプリントに反映 | 開発後の最後のフェーズでしっかりとテストに集中し、品質を担保する |
進捗管理 | 週次や日次のミーティングを行い、スプリント単位で細かく進捗を確認する | 設計段階での全体スケジュールに沿って、プロセスごとに進捗を確認する |
ウォーターフォール開発は、「要件定義→設計→開発→テスト」の一連のプロセスを一つずつ完了させてから次のステップに進む手法です。
プロジェクトの初期段階で要件定義を入念に実施します。そのため、開発するシステムの方向性をしっかりと定めたうえで開発に入れるというメリットがあります。
一方で、一度開発に入ると前のプロセスに戻ることができないので、仕様変更に柔軟に対応することができなかったり、テストのフェーズになって初めて設計に穴があることがわかったりすることもあります。
また、すべての機能を開発完了したあとにリリースするため、要件定義の段階でユーザーの需要がない機能が含まれていたとしても、ユーザーからのフィードバックを得るのが遅れ、結果的に開発リソースが無駄になってしまうというデメリットもあります。
このようなウォーターフォール開発のデメリットを低減するのがアジャイル開発です。
アジャイル開発では最低限の機能に開発を絞り、スプリントを繰り返していくため、仕様の検討漏れなどに早い段階で気付くことができます。
また、ウォーターフォール開発よりも素早く初期リリースができるため、ユーザーからのフィードバックをより早い段階で得られます。そのフィードバックを仕様に反映して、次のスプリントで開発に活かすことができます。
3.アジャイル開発のテストのポイント
アジャイル開発のテストにおけるポイントは以下の3つです。
①テスト観点を明確にする
まず、テストの目的や対象を明確に定義し、テストすべき機能や要件を把握します。アジャイル開発はウォーターフォール開発より比較的柔軟に仕様変更ができるため、テスト観点も重要な機能に絞って、素早く完了できるようにしておかなければなりません。また、開発がアジャイルに進むということは仕様も柔軟に変更されます。そのため、テスト仕様も柔軟に変更できるように設計しておかなければなりません。
②テストを自動化する
アジャイル開発ではテストの自動化が重要です。ウォーターフォール開発と違い、細かいテストを繰り返し実施します。そのため、繰り返し行われるテストを自動化することで、テストの効率化や継続的な実行が可能となります。また、自動化により開発者は手作業でのテストから解放され、開発に集中できるようになります。
③テストファーストのアプローチを取り入れる
アジャイル開発では、テスト駆動開発(TDD)の考え方を取り入れるといいでしょう。詳細は次章で紹介しますが、最初にテストケースを書いてから、そのテストケースを満たすようなプログラムを開発するアプローチです。このアプローチにより、プログラムの品質が向上し、テストのプロセスを素早く終えることができます。
4.テスト駆動開発(TDD)
アジャイル開発における重要な考え方の一つに、テスト駆動開発(Test-Driven Development: TDD)という手法があります。
ソフトウェア開発の手法の一つで、最初にテストを作成し、そのテストを通過するようにソフトウェアを開発していく手法です。
基本的な流れは以下の通りです:
①テスト作成(Red)
これから開発する機能が完成したときに、成功するテストケースをまず作成します。このテストケースはこの時点では失敗しますが、それが正しい状態です。
②開発(Green)
テストが失敗することを確認したら、そのテストを通過するような最小限のプログラムを開発します。開発した後、テストに成功すれば次のステップに進みます。
③再設計(Refactor)
プログラムが期待どおりに動作することを確認したら、プログラムを再設計してより効率的で理解しやすいものにします。このとき、既存のプログラムの機能に影響を与えないように、プログラムのコードを見やすく修正します。
このサイクルを繰り返すことで、段階的にソフトウェアを開発していきます。TDDの利点は、コードの品質向上やバグの早期発見、設計の改善などがあります。
TDDに沿って開発を進めることで、アジャイル開発におけるテストのプロセスを素早く終えることができます。
5.まとめ
本記事では、アジャイル開発のテストのポイントに焦点を当て、その重要性や手法について詳しく説明しました。
アジャイル開発では、スプリントと呼ばれる短い開発サイクルを繰り返すことで、最低限の機能に絞って早期リリースを行います。
そのため、アジャイル開発では素早いテストが求められます。テスト観点を明確にし、テストの自動化や、テスト駆動開発(TDD)のアプローチを取り入れることが重要なポイントになります。
アジャイル開発におけるテストは、開発プロセス全体を支える重要な要素であり、品質保証や進捗管理に大きく貢献します。
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