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1.テスト見積りの目的

テスト見積りは、システム開発プロジェクトにおけるテスト作業にかかる時間やリソースを予測するプロセスです。
テスト実装やテスト実行にかかる工数と、そのテスト業務に必要なハードウェア・ソフトウェアや、テスト環境の構築準備を含む予算を確保します。

2.テスト見積りの主な手法と特徴

テスト見積りの手法はいくつかありますが、プロジェクト内容によって適切な手法は異なります。
全ての手法に共通して言えることは、見積りは不確定要素が必ず含まれるので、常に見積り誤差の可能性があることを関係者に明示することが重要です。
以下では代表的な方法をご紹介します。

1 過去に類似したプロジェクトの類推見積り

特徴 過去の類似したプロジェクトの実績をもとに、新しいプロジェクトの見積りを行います。
利点 既存のデータを使用するため、比較的迅速に見積りが可能です。また、類似性の高いプロジェクトであれば、精度の高い見積りが期待できます。
注意点 プロジェクトの類似性が不十分な場合、見積りの精度が低下する可能性があります。

2 複数観点によるクロスチェック見積り

特徴 楽観的な見積り、悲観的な見積り、および最もありそうな見積りなど複数の観点から見積りを行います。
利点 不確実性を考慮し、リスクを低減するための手法です。また、単一の見積りよりも信頼性が高い場合があります。
注意点 見積りの複雑さが増すため、手間や時間がかかる場合があります。

3 ボトムアップ見積り

特徴 プロジェクトを細かな要素に分解し、それぞれの要素の見積りを合算して全体の見積りを行います。プロジェクト開発ではお馴染みのWBS(Work Breakdown Structure)はこのボトムアップ見積りの代表格と言えます。
利点 詳細なタスクレベルでの見積りが可能であり、プロジェクト全体をより正確に把握できます。
注意点 要素ごとの見積りの正確性が保証されない場合、全体の見積りの精度も低下する可能性があります。

3.各手法を用いた具体例

1 過去に類似したプロジェクトの類推見積り

類推見積りは、過去実績のある案件をベースに、類似案件テスト工数を類推します

シナリオ:過去実績のある開発案件αの見積りから、今回の案件α´を見積る

  • A案件と類似したA’案件があった
  • テスト計画の内容はA’と変わらない
  • A’の工数をそのまま利用

こちらは類似する案件や過去の実績を利用するので、開発事例のない新規案件や過去の実績をまとめていない場合、利用できない見積り方法となります。

2 複数観点によるクロスチェック見積り

クロスチェック見積りは、複数の異なる視点から工数を算出します。

シナリオ:同じテストに対して、開発チーム・テストチーム・品質管理チームがそれぞれ工数を出し、3者の観点を統合して見積る

  • 各担当者がテスト工数を見積る
  • それぞれの見積り内容に不一致や差異を確認する
  • 必要に応じて、修正を行い、最終的な見積りを作成する

テスト品質におけるクロスチェック見積りは、テストプロセス全体の効率性や品質向上に貢献します。
異なる視点からの評価を統合し、テストの有効性を確認することで、品質管理プロセスが強化されます。

1 ボトムアップ見積り

ボトムアップ見積りは、各工程のタスクを洗い出し、それぞれの工数を積み上げます。

シナリオ:Webサイトのある画面のテストタスクを見積る
1画面のテスト設計につき、18h
 ― 仕様把握:2h
 ― テスト観点の抽出:4h
 ― テスト項目作成:8h
 ― レビュー:2h
 ― レビューコメントの反映:2h

テスト対象は全部で20画面あるとすると、テスト設計の総工数は、18h × 20画面 =45 人日となります。

この場合、1画面分のテスト設計を実際にサンプルとしてやってみた実績値を適用すると、より精度の高い見積りを算出することができるでしょう。

4.見積りのよくあるトラブルとその対処

精度の高い見積りは、プロジェクトの成功に不可欠です。
一方で、これから起きるであろうすべての問題点やタスクを事前に割り出す行為でもあるため、不確実性を伴います。
以下に見積りを算出する際の、よくある注意事項と対処を記載します。

テストの要件やスコープの定義が不十分であった

仕様やテスト範囲の定義が不十分な状態で見積りをしたため、見積りの精度が粗いことがあります。
テスト環境やテストデータの準備、自動テストの動作確認など抜け漏れがないようにしましょう。
また、見積りの根拠として、どこをテストするのか、どんなテストをするのか、それらのテストを何人で行い、納品物は何かを明確にできると良いでしょう。

リスクが発生する可能性の考慮不足

綿密にスケジュールを立てたとしても、テストケースが予定通りに消化できないことがあります。
具体的には以下のようなことが発生する可能性があります。

  • テストケース消化のペースが遅いテスト実行者がいる
  • テスト用機器の操作の習得に想定以上の時間がかかる
  • 不具合が想定以上に見つかり、不具合修正や確認に時間を要する
  • 不具合の影響度が大きく、テスト実行を中断する

上記のような状況が起こることを想定して、あらかじめ1日8時間働く場合、
6時間に直して計算することや、全体の工数を1.3倍で算出し、全体の作業にバッファを持たせることが重要です。

見積り作成後のフォロー

前述のとおりテスト見積りは、正確に未来を予測することは困難です。見積り作成後、テストの実態に合わせて、管理することも大切です。

5.まとめ

本コラムではテスト見積りの手法と特徴をご紹介し、注意事項について記載しました。
テスト見積りは、不測の事態が起こったことを想定して、バッファを用意しておくことが大切です。
テスト見積り作成後においては、予実を振り返ることも重要です。

株式会社GENZでは、様々なプロジェクトの実績をもとに、お客様のニーズに寄り添うお見積りを提示いたします。
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